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装置設計者のための騒音の基礎 第12回

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装置設計者のための騒音の基礎

騒音計のしくみ - 1

 今回は、騒音計のしくみについて説明します。

 図1に一般的な騒音計の外観と内部機能のブロックとを示します。音は空気の粗密波であり、音を受けると物体はわずかに振動します。マイクロホンとプリアンプは、音による薄膜の振動を電気信号に変換します。さらに、本体内部のアンプで電気信号を増幅した後、第7回「A特性音圧レベル」で説明したように、A特性フィルタを通過させることで、人間の聴感にあわせた特性に変換します。次に、平均化処理とデシベル計算を行い、表示させます。

 マイクロホンには、ダイナミック型、コンデンサ型、セラミック型がありますが、コンデンサ型は広い周波数帯域に渡って平坦な特性であること、安定性が高いことを特徴としているため、ほとんどの騒音計はコンデンサ型マイクロホンを採用しています。コンデンサ型マイクロホンの構造について、図2をもとに説明します。

 コンデンサ型マイクロホンでは、振動板と背極とでコンデンサを構成していて、振動板の変位を静電容量の変化として検出します。そのため、振動板と背極との間には、一定の電圧が加えられています。この偏極電圧の印加と、静電容量の変化を電圧の変化として取り出すのがプリアンプです。図1のように、マイクロホンとプリアンプは通常は一体となっています。プリアンプからの電圧信号は微弱であるため、これを増幅する役割と、プリアンプ用の電源を供給しているのがアンプです。アンプからの出力にA特性補正を加えた後、平均化処理と対数演算を行った後に結果を表示します。平均化処理には、SlowとFastと呼ばれる方法がありますが、詳細は次回に説明します。


図1 騒音計の外観とブロック


図2 コンデンサ型マイクロホンの構造

 プリアンプからの出力と音圧との関係を実際の例をもとに説明します。図3はUC-53Aと呼ばれるマイクロホンの校正チャートで、製品ごとに校正結果として、添付されています。右側のグラフが周波数特性で、20~12kHzで平坦な特性となっています。20kHzでは、2dBほど感度が低下していますが、デシベル計算は、比率が加減算に変わるため、音圧レベルも実際の値よりも2dBほど低めになることを示します。
 
 左上に「Open Circuit Sensitivity」として、-27.1dBと記載されているのが、音圧感度であり、プリアンプで電圧を取り出した際の音圧1Paあたりの電圧出力を下記の式でデシベルとして表現した値です。



 下の段にある44.1mv/Paが、音圧1Paあたりの電圧出力になります。試しに、44.1mv/Paで音圧感度を計算してみると、

20log10 44.1×10-3=-27.1 と同じ値となります。

 UC-53A用のプリアンプの増幅率は-0.6dBであるので、マイクロホンとプリアンプとを組み合わせた場合の音圧感度は、-27.1-0.6=-27.7dBとなります(デシベル表示の増幅率と倍率の関係も音圧感度と同じく、倍率の常用対数の20倍です)。
プリアンプ出力を例えば、アンプで30dB増幅させると、最終出力は、-27.7+30=2.3dBとなります。したがって、アンプ出力の電圧/音圧感度を求めると



となります。
 計測結果から音圧を求めるには、アンプ出力[V]を1.3で割ると音圧[Pa]が得られます。以上の計算はマイクロホンとプリアンプをFFTアナライザと組み合わせて用いる場合などに必要となります。


図3 マイクロホンの校正チャート

次回は、実効値検波から表示について説明します。

【参考文献】 機械音響工学 鈴木ほか コロナ社 





著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動)

1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻
1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授




著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

 

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