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装置設計者のための騒音の基礎 第14回

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装置設計者のための騒音の基礎

検定と校正

 今回は、検定と校正について説明します。

 校正とは、計器の示す値と標準によって実現される値との差を確認する作業であり、この差を修正する作業は含まれません。検定も校正と同様ですが、その作業は検定機関のみが行い、使用者は行えません。

 騒音計は、計量法の特定計量器に指定されています。そのため、計量法で規格が定められています。表1に、騒音計の規格の一部を示します。騒音計は、大別して、普通騒音計と精密騒音計の2種類があり、普通騒音計は、環境騒音測定を目的としています。一方の精密騒音計は、機械装置の騒音評価や低騒音化の研究に用いられます。

表 1 普通騒音計(クラス2)と精密騒音計(クラス1)の違い
計量法 普通騒音計 精密騒音計
器差[dB] ±1.5 ±0.7
目盛誤差[dB]
基準レベルの±10dB以内
±0.3 ±0.2
周波数範囲[Hz] 20~8k 20~12.5k
     
JIS規格 クラス2(普通級) クラス1(精密級)
レベル直線性誤差[dB]
入力レベルの±10dB以内
±0.5 ±0.3
周波数範囲[Hz] 20~8k 16~16k

 
 計測結果が取引または証明に用いられる場合は、法定計量器すなわち、国の検定に合格した騒音計を用いて、第2回「騒音に関する学会、資格」で説明したような資格を有する者が測定を行う必要があります。この場合、騒音計の検定は検定機関が行い、「検定済み」シールにより精度が保証されるため、使用者による校正は禁止されています。

 一方、取引や証明以外の、製品開発時の測定などでは、検定や有資格者の作業は必要ではありませんが、その場合、測定を始める前に、以下に説明する校正を行い、必要な精度を確保することが必要です。

  騒音計の校正では、基準音圧を発生する音響校正器にマイクロホンを挿入し、音響校正器からの音を計測した結果が基準値と等しくなるかを確認します。音響校正器はJIS規格に定められた図1に示すピストンホンや簡易音響校正器があります。ピストンホンは、250Hzの機械振動により114dBの音を発生します。一方、簡易音響校正器は、圧電セラミックを音源としていて、1kHzで94dBの音を発生します。騒音計の周波数特性をFlatあるいはC特性に設定し、計測した結果が基準値と2dB以上ずれている場合は、メーカでの点検・修理を行う必要があります。
ちなみに、騒音計のCAL機能は、騒音計内部で基準信号を発生するもので、外部接続機器の校正用に用いられます。JIS規格では、音響校正器による校正のみが認められています。


図1 音響校正器

 法定計量器では、検定機関による「検定済み」シールにより精度が保証されるため、使用者による校正は禁止されています。なお、法定計量器には有効期間があり、有効期間内に検定機関による検定を受ける必要があります。一方、製品開発時などで用いる測定器では、精度を保証するために、使用者あるいはメーカや校正業者による定期的な校正が必要となります。

 最近の計測器は、デジタル処理が主流となっています。デジタル処理では、複雑な処理が容易に行えるほか、バラツキが少ないなどの利点がありますが、アナログ信号をデジタル信号に変換する際に生じる誤差について留意する必要があります。次回から、アナログ・デジタル変換時の誤差について説明します。

 次回は、信号のデジタル化の概略について説明します。

【参考文献】 機械音響工学 鈴木ほか コロナ社 





著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動)

1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻
1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授




著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

 

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