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装置設計者のための騒音の基礎 第25回

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装置設計者のための騒音の基礎

窓関数

 この連載では、製品開発・設計をされる方を対象に、騒音に関する基礎的な事項を説明しています。今回は、リーケージエラーの発生を抑える手法、すなわち窓関数について説明します。
 
 窓関数とは、ある区間以外は0となる関数で、代表的な窓関数であるハニング窓(ハン窓)は、下記の式で表されます。(1)式で表されるハニング窓をサンプリングデータに掛け合わせると、サンプリングデータの始まりと終わりの値は0となるため、フーリエ解析は連続したデータとみなします。


 エクセルのフーリエ解析機能を用いて、窓関数の効果を試してみます。図1に示すように、B列に10.5Hzの正弦波信号を生成します。第24回「リーケージエラー」で説明したように、B列の信号をプロットした図2の波形を繰り返すと、波形の終わりと始まりとが急峻な谷を形成し、不連続な波形となります。次に、ハニング窓を作成します。C列に、(1)式で表されるハニング窓の式を入力します。ハニング窓は図3に示すような形状となります。D列に、B列とC列の積を設定すると、信号波形にハニング窓操作を行った波形が得られます。図4に示すように、ハニング窓処理後の波形は始まりと終わりの値が0となるため、繰り返しても、連続した波形となることがわかります。

 データ→データ分析→フーリエ解析と選択し、D列のデータをフーリエ解析し、F列に振幅を求めると、図5に示す周波数スペクトルが得られます。図5で、青い線が窓処理後の周波数スペクトルで、橙色の線が元の信号の周波数スペクトルを示します。図を見ると、青い線で示したスペクトルの裾の広がりは、橙色で示した元の信号のスペクトルの裾の広がりに対して小さくなり、リーケージエラーの抑制に効果があることがわかります。


図1 エクセルシートへの数式の入力


図2 信号波形


図3 ハニング窓


図4 窓関数処理後の信号波形


図5 周波数スペクトル

 一方、図5を見ると、窓関数処理後のスペクトルのピークは、元の信号のスペクトルのピークに対して、小さくなっています。これは、窓関数処理が信号の大きさも操作するためで、窓関数処理を行った場合、補正も行う必要があります。次回は、窓関数の補正について説明します。

 


【参考文献】 機械音響工学 鈴木ほか コロナ社 





著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動)

1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻
1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授




著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

 

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