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流体解析の基礎講座 第11回 第4章 熱の基礎(3):4.4.3 輻射

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流体解析の基礎講座

4.4.3 輻射

 物質を構成する分子や原子は運動するときに内部エネルギーの一部を電磁波の形で放出します。逆に分子や原子は電磁波を受け取ると、そのエネルギーを吸収し内部エネルギーに変換する性質を持っています。このような電磁波を介したの伝わり方を 輻射 (もしくは 放射 )と呼びます。
  熱伝導 対流熱伝達 では熱を伝える何らかの物質が必要となりますが、輻射はこれらとは異なり何も媒介する物質がなくても熱が伝わります。そのため、宇宙などの真空中であっても熱が伝わります。
 例えば、図4.8のように天気の良い日であれば、日がよく当たる家の屋根や道路は気温より高温になりますが、これは太陽から放出された電磁波が宇宙空間や大気中を経て屋根や道路の表面を直接温めているためです。



図4.8 輻射による熱移動


 物体が輻射によってエネルギーを吸収もしくは放出する割合は 輻射率 というパラメータによって表現されます。輻射率は 0 ~ 1 の値を取り、この値が高いほど、輻射によって放出もしくは吸収されるエネルギーが大きくなります。輻射率の値は物体表面の材質や色などによって異なる値を示しますが、一般的には、黒い色の物体などでは高い値、白い色の物体やよく磨かれた金属面などでは低い値となります。
 また、もう一つ重要なパラメータとして 形態係数 があります。これは2つの伝熱面の幾何学的形状によって定まるパラメータで 0 ~ 1 の値を取ります。形態係数は一方の面から放出されたエネルギーがもう一方の面に到達する割合を示したもので、わかりやすい表現に言い換えれば、輻射によって熱移動が生じる相手の面がどの程度見えるのかを示したものとなります。例えば、2面間で相手が完全に見える場合は1、全く見えない場合には0となります。
 図4.9に示す例で考えると、面1からはどの方向を向いても面2を見ることができます(青線)。そのため、面1から面2への形態係数は1となります。一方、面2から面1を見るときには向きによって面1が見える場合(赤実線)と見えない場合(赤破線)があります。そのため、面2から面1への形態係数は1未満の値となります。このように2つの面の関係において、必ずしも相互に同じ値を取らないということに注意してください。



図4.9 形態係数の例


 輻射による熱移動量は2つの面の輻射率が高く、形態係数が大きいほど大きくなります。

 次回は、「第5章 熱流体解析の基礎(1)」についてご説明したいと思います。





著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。

 

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