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流体解析の基礎講座 第10回 第4章 熱の基礎(2):4.4.1 熱伝導,4.4.2 対流熱伝達

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流体解析の基礎講座

4.4 熱の移動形態

 の移動形態には熱伝導、対流熱伝達、輻射の3種類があります。図4.5に示した部屋の様子を例に取ると、床に接している部分で床暖房の暖かさを感じるのは熱伝導、エアコンの暖房で吹き出す風を暖かく感じるのは対流熱伝達、目の前のストーブを暖かく感じるのは輻射によって熱が伝わるためです。以下ではそれぞれについて、もう少し詳しく説明していきたいと思います。



図4.5 熱の伝わり方


4.4.1 熱伝導

 物体内の 温度 が均一ではないときには、物質を構成する原子や分子(金属の場合には自由電子も含まれます)の運動によって、高温の領域から低温の領域へ熱移動が生じます。このような熱の伝わり方を 熱伝導 と呼びます。
 例えば、図4.6のように温かいお茶の入った缶を持つと熱く感じますが、これは缶の中のお茶と缶を持つ手の間に生じた温度差によって、缶を介した熱伝導が生じるためです。



図4.6 熱伝導による熱移動


 温度勾配が同じ場合、熱伝導によって運ばれる熱量は 熱伝導率 が大きいほど多くなります。
 また、熱伝導は物質の移動を伴わずに熱の移動が生じる現象であり、 固体 に限らず 気体 液体 などの 流体 でも起こります。

4.4.2 対流熱伝達

 熱伝導では物質そのものは移動せずに熱が伝わりましたが、物質が流体の場合には 流れ によっても熱が輸送されます。このような熱の伝わり方を対流熱伝達と呼びます。 対流熱伝達 では熱伝導に比べて多くの熱を伝えることが可能です。
 例えば、図4.7のように水を入れた容器を加熱したときに、加熱されている容器の底と水の接触面付近では熱は熱伝導によって伝わります。これに加えて、加熱された水は 浮力 によって上昇するため対流が生じ、流れによっても熱が運ばれます。



図4.7 対流熱伝達による熱移動


 固体表面と流体との間で対流熱伝達によって輸送される熱量は 熱伝達係数 によって表現されます。熱伝達係数は流体の種類や流れの状態、物体形状などによって変化し、この値が大きいほどよく熱を伝えます。
 一般的には、流体の熱伝導率が大きいほど熱伝達係数は大きくなります。そのため、気体と液体を比較すると液体の熱伝達係数のほうが大きくなります。
 例えば 100 ℃ のサウナに入ることはできても、100 ℃ のお風呂には入ることはできません。これは空気より水の熱伝達係数のほうが大きく、熱を伝えやすいため、熱く感じてしまうからです。
 また、伝熱面近傍における 流速 が大きいほど熱伝達係数が大きくなります。そのため、自然対流と強制対流を比較すると強制対流の熱伝達係数のほうが大きくなります。夏に扇風機の風を強くしたほうがより涼しく感じるのはそのためです。

 次回は、「第4章 熱の基礎(3)」についてご説明したいと思います。





著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。

 

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