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流体解析の基礎講座 第9回 第4章 熱の基礎(1):4.1 温度と熱,4.2 浮力,4.3 自然対流と強制対流

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流体解析の基礎講座

第4章 熱の基礎(1)

 第4章では熱の基礎として、温度と熱、浮力、自然対流と強制対流、熱の伝わり方の4つの項目について取り上げます。本章でもすべての単位は SI 単位系 に準じています。


4.1 温度と熱

  温度 とは寒暖の度合いを数値で表したものであり、単位には [℃] や [K] などが用いられます。 単位が [℃] で表現される温度は 摂氏温度 、[K] で表現される温度は 絶対温度 と呼ばれます。両者の1度は同じ温度差を表しますが、それぞれ基準となる温度が異なっており



の関係が成り立ちます。例えば、0 ℃ は 273.15 K と等しくなります。
 物質は温度に応じた内部エネルギーを持っており、熱はこのエネルギーの形態の一つです。が流入するとその分温度が上がり、逆に熱が流出すると温度が下がります。熱量は [J] という単位で表わされ、単位時間あたりの熱量という場合には単位として [W] が用いられます。
 例えば、冬場の部屋を考えたとき、図4.1のようにヒーターをつけると部屋の温度が上昇します。これはヒーターから部屋の中の空気に熱が伝わり、空気の温度が上昇するためです。



図4.1 ヒーターがついているときの熱移動


 一方、図4.2のようにヒーターを止めると、部屋の温度が低下します。これは室内の空気から室外へと熱が伝わり、空気の温度が低下するためです。



図4.2 ヒーターが消えているときの熱移動


 熱は温度が高いところから低いところへ伝わる性質があり、温度差のある物体同士を接触させると温度はやがて等しくなります。

4.2 浮力

 物質の温度が上昇すると、物質を構成する分子(原子)は活発に運動するようになります。その結果、多くの物質では温度の上昇に伴って体積が大きくなり、 密度 が小さくなります。
  流体 が温められた場合には、密度差によって重力とは逆向きの力が発生します。この力を 浮力 といいます。図4.3の熱気球は浮力を利用した代表的な例といえます。



図4.3 気球が浮かぶ原理


 なお、 圧縮性流体 では浮力を厳密に扱うことができますが、 非圧縮性流体 では流体の体積変化を考慮することができません。そのため、浮力を温度差に比例する力で近似することによって表現します。この近似を ブシネスク近似 と呼びます。ただし、温度差が非常に大きい場合には近似による誤差が大きくなるため、注意が必要です。

4.3 自然対流と強制対流

  流体 流れ はその駆動方法によって、自然対流と強制対流という2種類の流れに分類することができます。
  自然対流 はファンやポンプなどの流れを駆動する要因がなく、流体の温度差で生じる浮力によってのみ駆動される流れのことです。それに対して 強制対流 は、ファンやポンプなどの外部的な要因によって駆動される流れのことを指します。
 例えば、図4.4のように水を入れた容器を加熱すると、時間経過とともに (a) のように温まった水が浮力によって底から対流し始めます。これが自然対流です。一方、(b) のように容器に入った水を棒でかき混ぜた場合には、流れが外部的な要因によって駆動されていることになるため強制対流となります。



図4.4 自然対流と強制対流


 強制対流の場合には、ファンなどによって駆動された流れが持つ慣性力と比較して、浮力の影響はそれほど大きくないため、浮力の影響を考慮しなくてもよい場合があります。ところが、自然対流のみの流れや強制対流と自然対流が混在している流れの場合には、浮力による影響が無視できないため、浮力を考慮する必要があります。

 次回は、「第4章 熱の基礎(2)」についてご説明したいと思います。





著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。

 

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