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パッと知りたい! 人と差がつく乱流と乱流モデル講座 第1回 1.1 はじめに、1.2 乱流とは?

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パッと知りたい! 人と差がつく乱流と乱流モデル講座

乱流とは?(1)・・・実は身近な存在

1.1 はじめに

 「 乱流 」に対してみなさんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。 流体シミュレーション に関わる仕事や研究をしている方には「乱流」は馴染みのある言葉だと思いますが、解析条件を設定する中で意識をしているだけで、具体的にどのようなものが「乱流」であるかの物理的なイメージはあまりない方も多いのではないかと思います。そして、流体シミュレーションに関わることがない方にとっては、全くと言ってよいほど無縁な言葉ではないでしょうか。


図 1.1 乱流とは?


 そのように誰もがはっきりとイメージを出来ている訳ではない「乱流」ですが、実は身の回りに多く存在し、私たちの生活に大きな影響を与えています。例えば、人が歩くときの周りの空気の 流れ は乱流となります。自動車、鉄道、飛行機などの乗り物が動くときの周りの空気の流れも乱流です。エアコンから吹出す流れ、扇風機の羽根が回転することで発生する流れも乱流です。また水道の蛇口をひねったときに勢いよく出る水の流れも乱流です。私たちは乱流に囲まれて生活していると言っても過言ではないでしょう。

 そのような身近な乱流について、その功罪やメカニズム、そして乱流の計算がなぜ難しいのかなどについて皆さまに分かりやすくご紹介していきたいと思います。



図 1.2 身近な乱流の例


1.2 乱流とは?

 上述のように身の回りに多く存在する乱流ですが、その正体は一体なんなのでしょうか?言葉の意味は「乱れている流れ」ですが、「乱れている」とはどういうことなのでしょうか。流れは目に見えないことがほとんどですので、実際に乱流を「目撃」することは難しいですが、いくつか乱流が見えることがあります。では流れが目に見える例を取って「乱れている」状況を想像してみましょう。

 まず川の水の流れを思い浮かべてみてください。川には草木が流れていたり、泡が立っていたりしますので、水流を目で見ることができます。川の流れは上流から下流へと向かいますが、川に近づいてよく流れを見た場合、川面に浮いている落ち葉が回転していたり、流れが を巻いていたりしていることがあります。そのような状況には、上流から下流へという大局的な流れの中に、それとは別の動きが存在します。この動きが乱流のイメージです。

 次に線香の先から立ち上る煙の動きを想像してみます。図1.3の解析例にあるように、線香の先は熱いので、煙は 浮力 によって上昇していきます。すると、はじめは一筋になって上へ向かっている煙が、あるところから乱れて広がっていきます。また煙の動きをよく見ると、渦を巻いているところがあることに気がつきます。ここでも上へと向かう大きな動きとは別の運動が発生しています。この動きも乱流によるものです。つまり、流れの大局的な動きとは別の動きをしている乱れた流れが乱流のイメージです。そのような動きが発生するのは、流れの勢い(慣性力)が流れを抑制する力(粘度)を大きく上回る状況になっているためです。


図 1.3 線香の煙が上がる様子


 次回は乱流の役割についてご説明したいと思います。

⇒【参考】『流体解析の基礎 第8回 層流と乱流』





著者プロフィール
伊丹 隆夫 | 1973年7月 神奈川県出身
東京工業大学 大学院 理工学研究科卒業
博士(工学)

大学では一貫して乱流の数値計算による研究に従事。 車両メーカーでの設計経験を経た後、大学院博士課程において圧縮性乱流とLES(Large Eddy Simulation)の研究で学位を取得し、現職に至る。 大学での研究経験とメーカーの設計現場においてCAEを活用する立場という2つの経験を生かし、お客様の問題を解決するためのコンサルティングエンジニアとして活動中。

 

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