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船井電機株式会社 様

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船井電機株式会社 様インタビュー

低コスト・短納期の製品づくりをサポートする熱解析ツール

高品質かつ低コストの製品をタイムリーに提供することで高い信頼を得る船井電機。より競争が激しくなる中で強みを保つために欠かせなかったのが、熱解析ツールの導入である。同社はSCRYU/Tetra® HPC版ソルバーを導入することで、熱解析を活用したフロントローディングを実現。またトラブル分析でも効果を発揮している。


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船井電機株式会社 本社(大阪)


 船井電機は映像機器、情報機器などのさまざまな電子機器の設計・開発から製造、販売までを行う家電メーカーである。OEM製品を中心に手掛ける一方で自社ブランドも展開する。同社の製品は北米やヨーロッパをはじめ中南米やアジアなど全世界で目にすることが可能だ。身近なところでは、液晶テレビやDVD、ブルーレイなどのプレーヤーといった映像機器、また個人およびオフィス用プリンター、 さらにアンテナなどの受信関連用電子機器まで手掛ける種類は幅広い。

​ 船井電機の強みは、低価格かつ高品質な製品を顧客の要望に応じて短納期でタイムリーに送り出せることだ。これにより1961年の創立以来、業界で高い信頼度とシェアを得ている。この同社の強みを強力にサポートするのが、ソフトウェアクレイドルのSCRYU/Tetra®を活用したフロントローディングやトラブル分析だ。


発熱量の多いプロジェクタが導入のきっかけに

 船井電機が熱流体解析ソフトウェアを導入することになったきっかけは、当時新しく取り組んでいたプロジェクタの開発だ。プロジェクタの光源はとても発熱量 が大きい。この大きな熱負荷に対処するために、設計に取り組んでいったが、設計、試作、実験による温度計測、そして問題があれば、設計の手直しを何度も繰り返していた。この作業に非 常に時間が掛かり、効率の悪さを実感したのだという。当時は理論的な裏づけがなく、経験とそれまで蓄積したデータをもとに熱の流れを推測して対策を行っていた。だがこれでは効率化が難しかった。さらに開発期間の短縮や機器の小型化といった要請もあり、理論的な根拠に基づいて熱設計を行うべく、CFDを導入することになった。

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船井電機の主な製品群


SCRYU/Tetra®が業務にマッチ

 そこで同社は、4社のソフトウェアを検討した結果、ソフトウェアクレイドルのSCRYU/Tetra®を採用した。「採用の決め手は、サポートの手厚さや迅速さと、国内の自社開発製品であったところです。」と担当者はいう。船井電機は各ソフトウェアを比較検討するために、まずサンプルデータの解析を各ベンダーに依頼した。そのとき、ソフトウェアクレイドルとのやり取りや結果の回答などが迅速で、疑問に対する説明も丁寧だったという。ベンチマークの結果、精度も納得できるレベルだった。何より国内開発ということも信頼の高さにつながったそうだ。開発者が近くにいることから、サポートなども含めて信頼度が高いと判断されたようだ。

​ なお船井電機は電子機器設計が中心ではあるが、電子機器の熱解析に最適化された熱設計PACではなく、細かい形状が再現できるSCRYU/Tetra®を選んだ。そのわけは、例えば回転体など複雑な形状を頻繁に扱うからである。同社の製品には映像機器およびPC搭載向けのCD-RWやDVDなど、回転を再現しなければならない形状が多くある。ほかにもファンやブロアなどの回転体もSCRYU/Tetra®であれば、より現実に近い形で再現して一緒に解析することが可能だ。船井電機のラインナップをソフトウェアクレイドルとも相談した結果、モデル形状設定の自由度が大きいSCRYU/Tetra®を導入することに決定した。

並列計算が必須に

 さらに船井電機はHPC版ソルバーの導入も決断した。その理由は、解析が場合によってはかなり長時間になっていたためである。例えばプロジェクタの熱源周辺のごく限られた領域を解析する場合であっても、計算負荷が大きくなっていた。さらにプロジェクタ全体を解析しようとすると、解析にかかる時間も負荷も大幅に増えてしまう。そしてマシン自体をグレードアップしたとしても、解析時間があまり変わらないためそれほどメリットがなかった。当時、設計チームから依頼されるモデルの解析時間が200時間におよぶものも出てきていた。しかもこれは計算だけの時間で、解析のための前準備には1 ~ 3日かかる。その上、ほかのパターンも検討しようとするのは実質的に不可能に近かった。特に導入初期のころは設計がかなり進んだ段階での詳細モデ
ルを用いた解析依頼が多かったことも問題に拍車をかけた。200時間もかかるのでは、設計者も解析を諦めざるを得ない。設計側からもっと早く解析できないのかという声が出始め、解析側としてもハードウェアの負荷をどうにかしたいということから、24コアの並列計算が可能なHPC版ソルバーの導入を決定した。
 

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図1 DVDプレーヤー

DVDプレーヤーの事前検討に活用

 導入以来、フロントローディングからトラブルの原因解明まで、解析専任者2名による解析がなされている。SCRYU/Tetra®を使ってフロントローディングを行った例の一つが、DVDプレーヤーである。当時は価格や性能面で競争が激しかったため、一歩進んだプレーヤーの設計が求められていた。そこで騒音の低減およびコストダウンを実現することで製品の競争力を高めるために、通常ついている小型のファンをなく、ファンレスで熱を効率よく抑えたいという方針が設計部門から上がった。そこで解析部門と設計部門で協力しながら、さまざまな構造を検討していった。

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図2 DVDプレーヤー解析結果 

 DVDプレーヤーは、ファンがなくても筐体内のDVD部分の回転によって空気の流れが生じる。この風を利用してICチップをうまく冷却するような構造が必要だ。まず、ヒートシンクなしの構造が可能かを検討した。ヒートシンクの代わりに外枠のシャーシへと熱を逃がすため、シャーシを凹ませてICチップに接触させる構造を設計、解析した。またシャーシに穴を空け、DVD部分の回転により生じる風を取り込んで冷却する方法を検討。さらにIC周辺に集中的に風が来る構造にするため、風が必要ない部分に壁を追加するなどの検討も行った。CFDによってこれらのさまざまな事前検討を行った結果、伝導性のよいアルミの放熱機構を加えて、シャーシに穴を空けた構造へとたどり着いた。


 この例では、設計の初期段階からSCRYU/Tetra®を使うことができた。過去の同様のモデルの派生版を利用し、開発期間は半年以内であった。設計部門と3回程度、設計変更の情報をやり取りし、熱対策のための部品および形状の提案、デザイン上の制限などの情報をやり取りしながら、形状を決定していった。その後に設計グループが実験を行い、量産試作に移行。その結果、設計試作を大幅に減らし、低コストで素早い開発に成功した。


裏付けのある熱対策が行える

 以前は、とりあえず試作して実験をしては設計のやり直しという作業の繰り返しだった。だがCFDを使えば、普段は見えない流れが見えてくるため、試作が大幅に減るのだという。それにより現在は、試作時点で問題が生じても、設計のやり直しではなく部品を追加する程度で乗り切れるレベルにまで達しているという。例えば最近はICの小型化により単位体積当たりの発熱が大きくなるなどの新たな熱問題の要因も出てきているが、これらは事前にCFDによって検討できるものも多い。また設計部門としても、検討内容がどの程度の効果を見込めるのか、すぐ試すことができて助かっているということだ。

 フロントローディングが成功している同社でも、当初は想定していなかったちょっとした課題も生まれている。というのもフロントローディングはあらかじめ起こりそうな問題を予測し、対処したうえで設計を行う。つまり試作の段階では既に問題を取り除いているため、それほど大変な熱問題は起こらなくなる。そのため解析を行ったことによって生じた効果が分かりにくいのである。一方、発生したトラブルへの対応だと、解析によって問題の原因が分かるため、効果が
分かりやすい。これは船井電機に限らず、近年、熱設計の現場での共通した状況だ。熱解析ツールを導入する場合は、その効果を把握する何らかの手段の検討も重要になるかもしれない。
 

性能をさらに追及する

 今後も船井電機では、新製品にはできる限りSCRYU/Tetra®を活用していく考えだ。その際は設計段階から使用することになるという。このようにすでにCFDを十分に活用している感のある同社だが、まだまだ探求心は尽きないようだ。「今後もより精度を上げていきたい」と担当者は語る。具体的にはモデル化の精度を上げるとともに、適切な乱流方程式の種類などもしっかりと見極めていくつもりだということだ。フロントローディングの場合は概略設計の段階なのでそれほど問題はないが、トラブル対応の場合は詳細なモデルを利用することになる。そのためより高精度な解析を追求していきたいという。SCRYU/Tetra®にはさまざまな乱流方程式が組み込まれているため、各方程式の違いによる解析結果の差を分析して、より解析精度を上げ、的確な原因
解明に努めていきたいそうだ。

 また、近年さまざまな製品を手掛ける中で必要性の高まりを感じるのが連成解析だという。たとえば、構造解析と流体解析の連成を取り上げると、流体の圧力や流量に対して、その流体を受けた対象がどの程度の変形を起こすのか解析を通じて予測評価していきたいと考えているという。

 一方、少し違う用途として液体を扱う対象への適用も出てきつつある。液体を使った実験は準備や後片付けも大変だ。そういった場合にもCFDを活用することで、実験の検討数を削減するなど、業務改善へとつなげていきたいという。
 

SCRYU/Tetra®のさらなる進化を期待

 解析担当者は、ソフトウェアクレイドルには国内産解析ツールのベンダーとしてますます技術を高めて、世界で広く使われるような製品に成長してほしいとエールを送る。とくに連成機能を高めて、例えば構造面でも相談できるようなベンダーになってもらえたらうれしいとも語った。着実にSCRYU/Tetra®を使いこなしながら、次の段階へと進んでいく船井電機。今後もSCRYU/Tetra®を強力なパートナーとしてよりよい製品を作り続けるだろう。

 

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船井電機株式会社

  • 設立:1961年8月
  • 事業内容:電気機械器具(映像機器、プレーヤー、情報機器、その他)の製造・販売
  • 代表者:上村 義一
  • 本社:大阪府大東市
  • 従業員数:953名(2014年3月末現在)
  • 資本金:31,307百万円(2014年3月末現在)
  • URL:https://funai.jp/

 

※SCRYU/Tetraは、日本における株式会社ソフトウェアクレイドルの登録商標です。
※その他、本インタビュー記事に記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※本インタビュー記事の内容は2014年1月現在のもので、予告なしに変更する場合があります。また、誤植または図、写真の誤りについて弊社は一切の責任を負いません。

  

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