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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎25 第3章 流れ:3.5.5 抗力と揚力

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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

3.5.5 抗力と揚力

 物体を 流れ の中に置くと、物体は流れから力を受けます。この力のうち、流れの方向の成分を 抗力 、流れに垂直な方向の成分を 揚力 といいます。

抗力と揚力
図3.47 抗力と揚力

 抗力と揚力を 動圧 と代表面積によって無次元化したものをそれぞれ 抗力係数 および 揚力係数 といいます。抗力と揚力のことを英語ではそれぞれdrag(ドラッグ), lift(リフト)というため、抗力係数と揚力係数は添え字DとLを用いて、CD, CL のように表されることが一般的です。自動車のカタログで、CD値が記載されている場合がありますが、これは抗力係数を表したものになります。

 抗力 D [N] と抗力係数 CD 、揚力 L [N] と揚力係数 CL には、それぞれ以下の式に示す関係が成り立ちます。

 代表面積には、抗力では流れの方向から見た投影面積、揚力では流れに垂直な方向から見た投影面積を用います。また、物体が移動している場合には、代表速度に物体から見た流れの速度( 相対速度 )を用います。

抗力と揚力の代表面積
図3.48 抗力と揚力の代表面積

 翼の場合は例外的に、抗力と揚力いずれの場合にも流れに垂直な方向から見た投影面積が用いられます。

翼の抗力と揚力の代表面積
図3.49 翼の抗力と揚力の代表面積

なお、翼の揚力と抗力の比は 揚抗比 と呼ばれ、翼の性能を表す指標として知られています。

 もっと知りたい   摩擦抗力と圧力抗力
 抗力には大きく 摩擦抗力 圧力抗力 形状抗力 )の二種類があります。
 摩擦抗力は 流体 粘性 によって、物体表面で作用する摩擦に伴う抗力です。管路など、流れの方向に長い物体で支配的になります。

摩擦抗力
図3.50 摩擦抗力

 圧力抗力は流れが物体から 剥離 し、物体の正面(上流側)よりも背面(下流側)の 圧力 のほうが低くなって生じる抗力のことです。物体の形状に依存するため、形状抗力とも呼ばれます。

圧力抗力
図3.51 圧力抗力

 新幹線の先頭車両や航空機の翼のように、滑らかで圧力抗力が少ない形状のことを 流線型 といいます。一方、圧力抗力が大きな物体のことを 鈍頭物体 鈍い物体ブラフボディ (bluff body) といいます。単純な球などは鈍頭物体にあたります。

 抗力を抑えることは、エネルギーの節約などの観点から重要な課題となります。そして、効果的に抗力を抑えるためには、物体が受ける抗力の内訳を知ることが大切です。 例えば、ゴルフボール表面のディンプルは圧力抗力を減少させますが、摩擦抗力を増加させてしまいます。しかし、ゴルフボールでは圧力抵抗が支配的であるため、ディンプルを設けることで全体としては抗力が抑えられ、飛距離が向上します。





著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。 

 

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