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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎37 第4章 伝熱:4.6.3 反射・吸収・透過

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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

4.6.3 反射・吸収・透過

 熱放射 が物体の表面に到達すると、その一部は物体に吸収されます。そして、残りは物体を通り抜けて反対側に到達するものと表面で跳ね返るものとに分けられます。

 熱放射が物体を通り抜けることを 透過 といい、物体に到達した熱放射エネルギーに対する透過エネルギーの割合を 透過率 といいます。一般に、金属は不透明で熱放射を透過しませんが、ガラスなどの透明な物質は可視光線などの一部の波長に対して透明で熱放射を透過します。

 物体表面で熱放射が跳ね返って再び空中に戻ってくることを 反射 といい、物体に到達した熱放射エネルギーに対する反射エネルギーの割合を 反射率 といいます。また、反射には面に垂直な方向を基準として、入射角と等しい角度で反射が起こる 鏡面反射 と任意の方向に反射が起こる 拡散反射乱反射 散乱 と呼ばれる場合もあります)の2種類があります。物体表面に到達した熱放射エネルギーに対するこれらのエネルギーの比をそれぞれ 鏡面反射率 拡散反射率 といいます。同じ色の塗装面であったとしても、つや有り塗装の場合には鏡面反射、つや消し塗装の場合には拡散反射が支配的になります。


透過と反射
図4.23 透過と反射


 実在する物体では熱放射によって放出されるエネルギーの割合は 放射率 によって表されます。もし、物体が平衡状態で温度が一定であったとすると、熱放射によって周囲に放出されるエネルギーと熱放射によって周囲から吸収しているエネルギーがつり合って等しくなり、物体の放射率 ε と吸収率 α が等しいと見なせます。この関係を キルヒホッフの法則 といいます。

放射率 ϵ [-]=吸収率 α [-]

 また、エネルギーの保存則を考えると、透過・反射・吸収エネルギーの合計が物体に到達した全エネルギーと等しくならなければいけないため、透過率 τ、反射率 ρ、吸収率 α の間には、以下の関係が成り立ちます。

透過率 ϵ [-]+反射率 ρ [-]+吸収率 α [-]=1

 もっと知りたい   色による吸収率の違い

 良く晴れた日に黒っぽい服を着ると、白っぽい服を着たときに比べて暖かく感じるという経験をお持ちの方は多いと思います。そのため、黒い面は白い面に比べて熱放射の吸収率が非常に高いというイメージをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、それは必ずしも正しいとはいえません。

 身の回りで生じる比較的低温の熱放射では、赤外線と呼ばれる波長 0.8 μm ~ 0.8 mm の電磁波が多く放出されます。実はこの波長帯では色による吸収率の違いはそれほど大きくありません。

 一方で、日射には可視光線と呼ばれる 0.4 μm ~ 0.8 μm の電磁波が多く含まれていますが、この波長帯では色によって反射率や吸収率が大きく異なります。人間の目が色の違いを認識できるのも、色による反射率や吸収率の違いが大きいことによるものです。

 例えば、白色は可視光線のすべての波長を反射しやすく、人間の目には白く見えます。したがって、白い面では日射の吸収率は低く、温度が上がりにくくなります。それに対して、黒色は可視光線のすべての波長を吸収しやすいため、黒く見えます。したがって、黒い面では日射の吸収率が高く、温度が上がりやすいというわけです。

 余談になりますが、白色は吸収率が低く反射率が高いため、反射した日射が皮膚に到達しやすく、日焼け防止にはあまり適さないようです。暑さや見た目を気にしないのであれば、黒い日傘や帽子のほうが日射を吸収して遮ってくれるため、日焼け対策には効果があるといえます。


色と日射の反射率
図4.24 色と日射の反射率





著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。 

 

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