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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎09 第2章 物質の性質:2.6 粘性係数と動粘性係数

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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

2.6 粘性係数と動粘性係数   流体  

 粘性係数 流体 の粘りの強さを表したもので、単位は Pa·sです。粘度 という場合もあります。

 20 ℃ の水とサラダ油では、サラダ油の粘りのほうが強いことを感覚的にご存知だと思います。両者の粘性係数を比較してみると、水の粘性係数は約 0.001016 Pa·s であるのに対して、サラダ油の粘性係数は約 0.06 ~ 0.08 Pa·s で、水の 60 ~ 80倍ほどになります。


粘性の違い
図2.10 粘性の違い


 力が加わって分子の相対的な位置関係が崩されそうになると、分子は定まった位置に留まろうとするため抵抗が生じます。これが流体の粘りの原因で、このような性質のことを 粘性 といいます。一般に、分子どうしの結びつきが強い液体のほうが、気体よりも大きな粘性係数を示します。

 粘りは、流れに対してブレーキの役割を果たしますが、ブレーキの利き具合は流体の 密度 によって異なってきます。これは、同じ速度で走る自転車とトラックが全く同じ強さのブレーキをかけたとしても、重さが異なるので止まりかたが異なる、ということと同じです。


粘性の違い
図2.11 質量とブレーキの利き


したがって、流れに対する粘性の影響を考えるためには流体の密度を考える必要があります。そのために粘性係数を密度で割ったものを 動粘性係数 (または 動粘度 )といい、m2/s という単位で表されます。

 もっと知りたい   粘性係数と動粘性係数の単位

 流体に粘りがあることによって、流体どうしあるいは流体と 固体 の間には摩擦力が働きます。この摩擦力を せん断応力 といい、単位は Pa です。一方、距離に対する 速度 の変化の度合いを 速度勾配 といい、単位は 1/s となります。図2.12を例に取ると、2.0 m の距離で速度が 1.0 m/s 変化しているため、速度勾配 は 1.0 [m/s] / 2.0 [m] = 0.5 [1/s] となります。


速度勾配
図2.12 速度勾配


 粘性係数は単位速度勾配あたりに生じるせん断応力の大きさを示したもので、単位は [Pa] / [1/s] = [Pa·s] となります。

 動粘性係数はイメージすることが少し難しいですが、「流れ」がどのくらい伝わりやすいかを表したものです。流れは粘りによって周囲に伝わります。ところが、流体の粘りの強さが同じ、すなわち伝わる力の大きさが等しかったとしても、密度が大きければ重い分流れにくくなるため、流れは「伝わりにくい」ということになります。一方、密度が小さければ軽い分流れやすくなるので、流れは「伝わりやすい」と解釈することができます。

 動粘性係数の大小関係は粘性係数とは大きく異なります。20 ℃, 1気圧(= 101,325 Pa)における空気と水で比較すると、粘性係数は空気(1.83×10-5 Pa·s)<水(101.6×10-5 Pa·s)となりますが、動粘性係数は空気(15.01×10-6 m2 /s)>水(1.004×10-6 m2 /s)となり、大小関係が逆転します。これは粘りの強さは水のほうが大きいですが、流れの伝わりやすさは空気のほうが大きいことを表しています。例えば、うちわで空気をあおぐと流れは遠くまで伝わりますが、水をあおいでも流れはほとんど生じません。

 動粘性係数の単位はなかなか覚えにくいですが、 m2 /s で面積速度の次元を持っていると覚えておくとよいでしょう。





著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。 

 

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