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流体解析の基礎講座 第2回 第2章 物質の性質 (1):2.1 密度,2.2 粘性係数

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第2章 物質の性質 (1)

 第2章では 熱流体解析 で使用する 物性値 の意味について説明します。物性値とは物質が持っている性質をある尺度に基づいて数値で示したものです。解析を行う際には、物性値を設定することによって、解析対象が空気なのか水なのかといったことを反映させます。それぞれの数値が大きい場合、小さい場合に物質はどのような性質を持っているのかということをイメージしながら読んでみてください。なお、すべての単位は SI単位系 に準じています。


2.1 密度

  密度 とは物質の単位体積あたりの質量のことで、単位は [kg/m3] です。
 鉄と発泡スチロールを例に取ってみると、同じ大きさであっても質量は大きく異なることが想像できると思います。この違いは2つの物質の密度が異なることによるものです(発泡スチロールの密度はおよそ 30 kg/m3であるのに対し、鉄の密度は 7,870 kg/m3にもなります)。



図2.1 密度の違い


 なお、普段の生活ではあまり意識することはありませんが、空気にも質量が存在し、1 気圧、20℃ における乾燥空気の密度は約 1.206 kg/m3 となります。それに対して水の密度は 998.2 kg/m3 にもなります。同じ速さで動くビーチボールとボウリングの球を比べると、重いボウリングの球のほうがより大きな力を与えられます。このことからもイメージできるように、空気と水が同じ速度で流れた場合には、密度が大きい水のほうが物体に与える力が大きくなります。

2.2 粘性係数

  流体 特有の性質として 粘性 があります。例えば、水と水あめをそれぞれかき混ぜると、水あめをかき混ぜるときのほうがより大きな力が必要となります。これは水あめの粘り気が水よりも強いためです。このことを粘性が大きいといいます。粘性の大きさは 粘性係数 という物性値によって表され、単位には [Pa・s] が用いられます。



図2.2 粘性の違い


 粘性には 流れ を均一にしようとする作用があります。例えば、バケツの水をかき混ぜるのを止めると、時間が経つにつれて流れは遅くなっていきます。これは水が静止しているバケツの内面に引っぱられることによって、バケツの内面に近いところから順に減速していくためです。
 また、流れに対する粘性の影響を考えるときには流体の密度を考える必要があります。これは軽い流体ほど粘性の影響を受けやすく、逆に重い流体はその影響を受けにくいためです。この影響の度合いを表した物性値は 動粘性係数 と呼ばれ、粘性係数を流体の密度で除すことによって得られます(単位は [m2/s])。

 次回は、「第2章 物質の性質(2)」についてご説明したいと思います。





著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。

 

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