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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎63 第6章 熱流体解析の手法:6.5.3 非圧縮性流体の数値解法

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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

6.5.3 非圧縮性流体の数値解法

 非圧縮性流体 基礎方程式 3.6節 で挙げた 連続の式質量保存則)と ナビエ・ストークス方程式運動量保存式)です。流速 の X, Y, Z方向成分をそれぞれ u, v, w, 圧力 p, 流体 密度 動粘性係数 をそれぞれ ρ ν とすると、それぞれの式は以下のように表されます。


◆ 連続の式

◆ ナビエ・ストークス方程式

 これらの式に含まれる未知数は u, v, w, p の4つです。その一方で、方程式の数も4つあることから、これらの式を解くことができれば、すべての未知数が求められることがわかります。

 しかしながら、これらの方程式を解くことは容易ではありません。その理由は大きく2つあり、1つはナビエ・ストークス方程式が 移流項 速度 の積を含む 非線形 の方程式であることです。これについては次回の  もっと知りたい  で詳しく説明します。

 もう1つは、圧力の求め方に工夫が必要となることです。例として、ナビエ・ストークス方程式のX方向の式を見てみます。ここでは、時間項 以外の値がすべて既知であるとし、これらを右辺にまとめたものを [時間項以外の項] と表すことにします。


 


 時間は点で定義される情報であることから、時間項は 差分法 による 離散化 が行われます。先ほどの式の時間項を 前進差分 という方法で離散化すると以下のようになります。


 


 この式を書き換えることで、現在の値から未来の値を求める以下の式が得られます。

 

 このように、時間項からはその変数の未来の値を求めることができるため、ナビエ・ストークス方程式からは未来の速度が求められます。したがって、残る圧力は連続の式から求めることになりますが、連続の式には圧力が含まれていないため、これを用いて圧力の計算式を導き、計算を行うことが必要となります。

 この問題を解決するために、様々な計算手法が提案されていますが、本コラムではその中でも商用ソフトウェアで広く用いられている SIMPLE法 について説明していきます。その計算手順を大まかにまとめると以下の通りです。


  • 現在の圧力を用いて、仮の速度を求める。
  • 未来の速度が連続の式を満たすと仮定し、仮の速度に必要な圧力の補正量を求める。
  • 現在の圧力に圧力の補正量を加えて未来の圧力を求める。
    さらに、仮の速度に圧力の補正量を加味して未来の速度を求める。

 SIMPLE法では、各項が陰的に計算されるため、時間間隔 を大きく取った場合でも、安定に計算が行えます。これが、商用ソフトウェアでSIMPLE法系統の解法が多く採用されている理由です。次回はSIMPLE法についてもう少し具体的に説明していきます。





著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。   

 

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