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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎44 第5章 物質拡散:5.3.1 物質拡散の要因

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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

5.3 物質拡散の要因

5.3.1 物質拡散の要因

 物質の 濃度 に偏りがあると、時間の経過とともに濃度が均一になる方向へ物質が移動していきます。このときに物質を移動させる要因には、大きく 分子拡散 と対流による物質拡散(以降では 対流物質拡散 と書きます)があります。

5.3.2 分子拡散

 私たちの身の回りでは、物質を構成する分子は絶えず運動していて、衝突を繰り返しています。そのため、異なる物質を混ぜると、図5.12のように分子同士が衝突を繰り返すうちに混ざり合い、均一な分布に近づいていきます。このような物質の移動の仕方を分子拡散といいます。



図5.12 分子の衝突による拡散


 分子拡散によって生じる 拡散流束 濃度勾配 に比例し、この関係を示したものを フィックの第一法則 といいます。また、比例係数のことを 拡散係数 といい、その単位は m2/sです。質量拡散流束 j [kg/(m2・s)]、モル拡散流束 J [mol/(m2・s)]、拡散係数を D [m2/s]、質量濃度 ρ [kg/m3]、モル濃度 C [mol/m3] とすると、フィックの第一法則は以下の式で表されます。





図5.13 フィックの第一法則


 濃度が質量基準か物質量基準かによって、拡散流束の単位が異なることに注意してください。また、拡散係数は混合物を構成する成分の組み合わせによって異なり、多くの場合、値を予測することが困難です。そのため、実用上は経験式から算出される値で代用されることがあります。

 もっと知りたい   フィックの第一法則のアナロジー(相似性)

 フィックの第一法則は、ニュートンの粘性法則 フーリエの法則 と非常によく似た形をしています。以下に3つの式を並べてみます。


  • ニュートンの粘性法則

  • フーリエの法則

  • フィックの第一法則

 


流体 密度 ρ [kg/m3 ] と 比熱 c [J/(kg・K)] が一定であると考えると、ニュートンの粘性法則とフーリエの法則は、以下のように運動量や 熱量 の勾配に比例した形に書き換えられます。

 
  • ニュートンの粘性法則(書き換え後)

  • フーリエの法則(書き換え後)


 これらの式とフィックの第一法則を見比べると、それぞれの比例係数である 動粘性係数 熱拡散率、拡散係数の単位がすべてm2/sで等しくなることがわかります。これらの係数の比を取ったものは、移動のしやすさの比を表した 無次元数 となり、それぞれ以下の名前がつけられています。

 


また、これらの無次元数の間には、以下の関係が成り立ちます。






著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。 

 

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